








〈孔〉の天体
現代の内部空間の最も気軽な外部との連絡は、窓を通じて行われる。窓の周辺を構成する 要素は、アルミサッシにはめ込まれたガラス、網戸、一層あるいは二層のカーテン、シャッターがある場合もある。これらはひとつの孔を制御するための道具でありながらそれぞれが別の目的を持ち、互いに独立し、ひとつのまとまりとしての強度をもたない。
開口部を考えるにあたり、〈孔〉を制御することに立ち返る。ここで〈孔〉は壁体にあい たリテラルな孔、そこに取り付けられた制御可能な構築物、構築物によって紐づけられた 関係の全てを意味する。
原広司は、「空間を境界づけ、外部との連絡のための孔をもった被覆」として定義づけられた有孔体について、「物質、エネルギーの運動が視覚的に把えられ、了解されるように 形態が決定される」と述べている。その場にいる人にとって有孔体との関係は受動的だといえる。より能動的に、実感をもって制御できる孔を設える。外部のエネルギーを吸収して、 内部を濃密にする瞬間と、内部のエネルギーを遥か遠くへ発散する瞬間を一つの孔を通じて実現する。太陽や月、星との距離をはかるレンズでありながら、室を構成する天井でも あり、身体にほど近い帽子や眼鏡でもある。それら一連の動きはすべて地続きであり、互いの存在と関係が同じ地平にあることを強烈に意識させる。 この限りない奥行きを持った孔がもつ天体性を了解するために設計を行う。
DATE_ 2025.03-2025.04
LOCATION_ Nowhere
CLIENT_ Nobody
PROGRAM_ Residence
DESIGN_ Tomoki Sekiguchi, Shunsuke Kimura
DRAWINGS_ Tomoki Sekiguchi
TEXT_ Tomoki Sekiguchi
DIRECTION_ Shunsuke Kimura