半透明なモノと空間

藤沢市本鵠沼駅の近くにある美容室の内装デザインをした。敷地はマンションの半地下階にあり、周囲は高いマンションに囲われているので、日光が入るのは1年の内わずかな時間だけであった。まず、現状の陰鬱な雰囲気を取り払い、この場所ならではの空間を作る必要があった。そこで、庭に落ちる光を天井のアルミルーバーへバウンドさせることで、室内に反射光による淡く柔らかな均質な光を生み出し、この場所にしかない非日常的な空間を作り出せないかと考えた。

この天井に浮かぶアルミのルーバーは鏡ほどではないが高い反射率を持ち、既存のコンクリートを映し込むことで溶け合いながら、モノとしても存在感のある半透明の雲のようなものとなる。壁や床は一部ふかし、既存コンクリートに近い色味となるよう木毛セメント板やフレキシブルボードで覆っている。似たような色味は、狭い空間に溶け込むことで広がりを生み出すと同時に、新たな様々テクスチャーを作りだすことができる。また、家具やトイレなどの空間はラーチ合板でつくり。小口のみをシルバーにペイントしている。合板という積層されて作られた素材の特徴を反射するシルバーの透明性でキャンセルしつつ光を映し込み、合板というものの質に新たな変化を与えている。

 

そもそも美容室という場所は、鏡を通した向こう側で生まれている出来事を通して成り立つ場所であり、ここと向こう側(虚構)の二重性を持つ半透明な空間を生み出していると考えられる。そして、上記の様々な灰色の素材は、テクスチャーのある表面性と透けて奥行きを感じる透明性の矛盾した2つの機能を持っている。これは、美容室という独特の空間性と共鳴することができる。モノとしての存在感と別の場所を透かしあらわす二重の表情を空間の中に散りばめることで、まだ見えない新たな自分(虚構)を見つけるための場所(美容室)となることを期待している。