FITNESS_03
なり得たかもしれないかたちたち
この展示は、京都市山科区で進行中のMprojectのディテールにまつわる運動を表したものである。実はこれまでMprojectに関わる展示を2回行ってきた。ひとつは、これまで私が4年間関わってきたプロジェクトの図面や写真を時系列で並べて、一連の流れを体験してもらうような展示だった。※1 ドキュメントのように、施主との打ち合わせ資料や現場の写真、施工業者とのやりとりなども展示し、設計のプロセスだけではなく、現場の様子を含めたさまざまな検討や変更がわかるような内容とした。1つ1つは小さなプロジェクトではあったが、長い時間をかけ全体にまでたどり着くまでのさまざまな運動をまとめてFITNESSとした。
ふたつめは東棟の改修が終わった2023年6月に内覧会を行い、そのタイトルをFITNESS_02とした。目の前にある建築を体験してもらうことが主な目的であるが、見えない視点を与えたいと考え、敷地全体をアクソメで描いた。分割したトリミングにより、部分の積み重ねから全体が出来上がったように見てもらえたらと考えていた。
3回目となる今回のFITNESSは現場のリアリティでも、遠くから部分を眺める視点でもなく、この世に存在することができなかったディテールを集めた展示としている。言い換えればフィットすることができなかったディテールの展示である。ガラスの納め方や庇の桁周りなどの、検討したものの様々な理由で実現しなかったアイデアたちや、実際につくられてから別のあり方もあったのではないかと新たに気づいてしまった後出しのアイデアなど。すでに完 成しているにもかかわらず、プロセスの裏側に存在していた別の可能性を表出させる試みである。実際に作られたディテールは、予算や施工性、現場でのやりとりなどさまざまな要因によるものであるが、作られなかったディテールにはそれらがなかった。もう一度存在するための理由を探すために、時間を戻して新たなモノ語りをつくる のではなく、現実になり得たかもしれないかたちたちともう一度向き合い、これからも続くモノ語りを紡いでみたい。
※1 2022年11月に行われたArchitecture Pass Kyotoにて出展。当時は一部の工事が進行中であったため、完成したものの紹介ではなく、それまでのプロジェクトのプロセスを展示することにした。